上陸直後の飼育について
変態・上陸は両生類の生活誌の中で最も大きな出来事です。水中生活から陸上生活への変化は我々が想像する以上の苦難があることでしょう。
このドラマチックな変化は2,3のことに注意をすればケージの中でも観察できます。観察を怠らずにつつがなく変態させましょう。
- 用意するもの。
- 上陸時のケージ・・・プラケースが一番よいです。
- 上陸後のケージ・・・小さなタッパーなどがよいです。蓋に空気穴をあけることを忘れずに。ポリスチレン製の透明の入れ物は蓋の開閉がしやすくよいです。100円ショップなどでいろいろ探してみましょう。
- 冷却装置・・・必ずしも必要とは思えません。
- 必要と思われる理由・・・上陸後は体を休めるために温度を低くして代謝を抑えた方がいいかもしれない。
- 使わない方が良いと思われる理由・・・上陸後の成長を早めるために温度を高くした方がよい。
- 水温計
- 上陸用陸地・・・砂利などでケージの半分くらいを陸地にし、上に水苔、植木鉢のかけらなどを置きます。水は2〜3cmくらいの深さにします。
- 世話(上陸前)
- 外鰓(えら)が小さくなってきたら上陸直前です。1〜3日後には上陸します。すぐに上陸用ケージを準備します。平地性の種類は6〜7月頃に上陸します。
- 外鰓が無くなって水中で浮くようになってきた個体は上陸させなければいけません。そのままにしておくと溺れて死んでしまいます。すぐに上陸用ケージに移動し自分で上陸するのを待ちます。
- 上陸準備のできた個体は熱帯魚用ネットですくうと網を上って逃げます。落としてしまうとダメージが大きいのでコップなどを利用してすくいましょう。
- 世話(上陸後)
- 上陸後は水苔の中や植木鉢のかけらの下などに隠れます。水場に水を必ず入れて置いて乾かないようにします。
- 餌は以下の物が考えられます。陸地で食います。
- ワラジムシ・・・夏場ならば孵化したての幼生が石の裏などにいます。土ごととってケージに入れます。
- コオロギ・・・1令幼虫を与えます。
- ミミズ・・・小さいものはそのまま。大きいものは細かく切って与えます。動いているうちに食わせます。動かなくなったものは食いません。
- イモムシ・・・小さなイモムシならばハコネのように上陸時のサイズが大きい種類に適しています。
- ミールワーム・・・これも小さいものをハコネの上陸用に使えます。
- イトミミズ・・・私は与えたことはありませんが目の前に落としてやると食うでしょう。
- 魚の肉・・・淡水魚の肉を小さくちぎって与えます。これに餌付けると管理が楽です。栄養剤をまぶして与えます。針金の先にくっつけて目の前で動かすと食います。根気との勝負です。
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手製給餌具 |
- 飼育環境にもよると思いますが、上陸時のサイズは種類によって異なります。幸い、大きさと餌付けの難しさは一致しません。小さくてもよく餌を食うものもいます。
- 大きいもの(10cm以上)・・・ハコネ
- 中ぐらいのもの(5cm以上)・・・オオイタ、クロ、ツシマ、トウキョウ、ベッコウ、
- 小さいもの(5cm以内)・・・カスミ、トウホク
- 一つのケージ内に複数個体いると餌付きが悪いように感じられます。できるだけ上陸して2〜3日したら小さいケージでよいので一個体ずつ飼育することをすすめます。
- 上陸後の個体はさほど共食いなどはしませんがオオイタやベッコウは共食いをするようです。
- この時期に最も起こりやすい失敗は湿度不足です。数時間乾燥が続けばあっという間に死んでしまいます。プラケースよりも穴の開いたタッパーがよいのはこれが理由です。毎日の観察を怠らずに湿度管理を行って下さい。湿度100%で大丈夫だと思います。
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製作:星野 (ihoshi@mb.infoweb.ne.jp)