上陸後から成体の飼育について
上陸が成功して陸上生活に移行できたならば一安心です。あとは大切なポイントさえ怠らなければ比較的容易に飼育が続けられます。
- 用意するもの。
- 上陸から1年間のケージ・・・小さなタッパーが湿度管理の面からもよいでしょう。
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ポリスチレン製小型ケース | タッパウェアにサランネット | 弁当箱にステンレス網 |
- 1年経過後および繁殖用ケージ・・・プラケースがよいでしょう。ガラス水槽は蓋ができないのでやめた方がよいと思います。
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プラケース |
- 冷却装置・・・夏の間は必要です。
- 水温計
- シェルター・・・隠れ家です。植木鉢を割ったものがよいと思います。
- 給水道具・・・理科室にあるポリエチレン製の洗浄ビンがよいと思われます。DIYで売っています。または「じょうろ」や「水差し」がよいと思います。霧吹きでは十分に水をやれません。
- 床材・・・赤玉土が最もよいと思います。色を見ることによって湿度の具合がわかります。
- ピンセット・・・給餌に使います。
※個人的には「水苔」は必要ないと思います。水苔があるといつも水苔の中に潜ってしまい観察もしにくいし餌付けもうまくいきません。赤玉土などを利用して湿度保持につとめればよいと思います。
- 世話
- 世話は基本的に
だけです。
- 給水・・・小さいうちはかなり湿らせます。大きくなったら赤玉土の乾き具合を見て水を差します。ひたひたになるくらいでよいです。特に冷蔵庫で飼育する場合は毎日水やりをする必要があります。
- 給餌・・・給餌回数は上陸後の時期で週に2〜3回、成体は週に1〜2回程度でよいでしょう。「少し太りすぎかな」と思うくらいがちょうどよいように思えます。餌は以下のものが考えられます。
- 魚の肉・・・淡水魚の肉です。ピンセットや針金で目の前で動かせば食います。栄養剤を添加します。これをメインにしてもさほど問題はないと思われます。
- 昆虫類・・・コオロギ、ミールワーム、ブドウムシなどです。特にブドウムシやミールワームは芋虫状の動きに食欲をそそられる場合が多いようです。
- ワラジムシ・・・カルシウムが豊富なので2週に1回くらいは与えたいところです。
- ミミズ・・・もちろん野生ではメインの餌でしょうからコンスタントに与えたいところです。
- 掃除・・・かなり大きなフンをしますのでフンをこまめに取り除きます。湿度が高いのですぐに「かび」が生えてきます。床材も定期的に取り替えましょう。
- 皮膚が弱く細菌感染症などにかかるとあっけなく死んでしまいます。できるだけ清潔さを保つように努力します。給餌用のピンセットはアルコールで消毒しながら使う方がよいと思われます。
- 基本的に飼育は単独飼育が原則です。複数飼育すると必ず餌を食えなくなる個体が出てきます。
- いずれの種類にしても餌付き易さには個体差があります。現実に全く餌付かずみるみるやせていき死んでしまう個体がいます。野生で採集した場合はある程度餌を食わなかった場合は生息地に戻してやることも必要です。ただし、感染症などにかかっている場合は野生に戻してはいけません。
- とにかく死亡原因のトップは「乾燥死」であると思います。常に給水を怠らないように。二番目は餓死です。冷蔵庫飼育中はあまり餌を食いませんが、秋に部屋飼育に戻すと俄然餌を食うようになります。このときに夏と同じような給餌間隔のままだと死ぬことがあります。
- 冬眠について
- 私の住んでいる宮崎は暖かいので真冬でも部屋の中ならば冬眠しません。しかし、個体のことを考えれば冬眠は必要であると考えます。
- ケージの中に水苔を多く入れて湿らせて、まとめて段ボール箱に入れて日当たりが悪く凍結しない場所に置いておきます。
- 冬眠中は時々観察をして湿度の調節のみ行います。
- サンショウウオは元々動きが鈍いので冬眠中とそうでないときの判断がしにくいです。「餌を食えば目を覚ました」と判断すればよいでしょう。
- 繁殖について
- 私は繁殖させたことはないのですが今まで聞いた話だと、十分に餌を与えておけば比較的容易に繁殖に持っていくことできるようです。
- 冬眠明けに大きめのプラケースに陸地と水場を作ります。水場はタッパーなどでやや深めにとった方がよいでしょう。
- ケージに冬眠明けの雄と雌を入れます。うまくいくときはこれだけで産卵するようです。
産卵用飼育環境 |
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撮影:佐久間 聡 |
- 寿命について
- 以下にサンショウウオの各ステージの期間を記します。もちろん種類によって異なります。
- 卵・・・3〜4週間
- 幼生・・・4〜5ヶ月。幼生のまま越冬する種類もあります。ハコネサンショウウオは2〜3年かかります。
- 亜成体(上陸から成熟まで)・・・4〜5年
- 寿命・・・10年前後
- サンショウウオは現在多くの生息地で絶滅が懸念され、苦労して入手して飼育を始めても動きもなく色も地味であり飼育の楽しみがわきにくい動物です。
しかしながら、うまく飼育すればかなり長い期間の飼育が楽しめます。大変な手間がかかる時期もありますが一度飼育を始めたならば最後まで責任を持って観察を怠らずに飼育を続けて欲しいと思います。
上陸直後の飼育について
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製作:星野 (ihoshi@mb.infoweb.ne.jp)