樹上生サラマンダー(ミットサラマンダー)の飼育方法
私は今までに50種程度のサラマンダーやイモリの飼育経験を持っていますが、樹上生サラマンダーの飼育経験はオオミットサラマンダーとメキシコミットサラマンダーの2種しかなく、最長飼育期間もオオミットサラマンダーで2年半、メキシコミットサラマンダーで2年です。したがって飼育方法を確立するに至っていないことをお断りして、現時点での飼育経験を基に解っていることを書かせていただきます。
樹上生サラマンダーの入手について
樹上生サラマンダーの飼育を成功させるには、状態の良い個体を入手できるかに掛かっているといっても過言ではありません。また、私の知る限りでは日本での飼育方法が確立されていないと思われ、上級者向きの種であることを認識しておいてください。
- 飼育個体を入手するに当たって留意すること
- 購入先を選ぶ
- 飼育個体は、適切な管理がなされ、飼育等について後々までも相談にのってもらえるような、なるべく専門知識の豊富な専門店から入手すると良いでしょう。
基本的に樹上生のサラマンダーは、入荷数が限られていて高価なサラマンダーのため、専門店で扱われていることが多いのですが、ちょっとした環境の変化であっという間に死んでしまうようなデリケートな一面を持った種なので、より一層の注意が必要です。
- 自分の目で見て健康な個体を選ぶ
- 地方の方で近くに専門店が無い場合は仕方がありませんが、なるべく自分の目で見て納得のいく個体を選びましょう。通信販売等で購入した場合、輸送中のストレスで体調を崩す可能性が高くなることを認識しておく必要があります。
健康な個体を選ぶ要点は、サラマンダー・イモリの飼育方法の入手についてを参照してください。
ただし、他のサラマンダーやイモリに比べて判断が難しく、健康そうに見えても購入して間もなくして尾を自切し、1週間後に死亡というケースも多々あります。また、いくら安価だからといっても、尾を自切している個体は、ほぼ間違いなく死亡しますので購入しない方がよいと思います。
- 購入時期を選ぶ
- 樹上生サラマンダーは、通年の温度変化の少ない中南米の熱帯域に生息するサラマンダーのため、温度や環境の変化に弱く、輸送中に体調を崩しているケースが多々あります。
店頭に並んだからといって直ぐに購入するのではなく、2週間程度様子を見て、元気で餌を食べている個体を選びましょう。
初夏〜夏の時期に入荷した個体は比較的体調を崩していないことが多いように思います。
飼育環境について
- 用意するもの
- ケージ・・・・・・・・飼育する種の大きさに応じて30cm〜60cm程度の水槽を用意します。飼育用プラケースでもかまいませんが、立体的な生息空間を持つ種のため、ケージ内に植物を植えたり、流木等で立体的なレイアウトにしますので、管理の利便性を考えると水槽の方がよいと思います。
- 冷却装置・・・・・・特に必要ありませんが夏場の高温期にはあると便利です。
- 加温装置・・・・・・プレートタイプやナイトランプタイプ等を使用しますが、ケージ内の温度が一定にならないように変化を持たせる必要があります。
- 温・湿度計・・・・空中湿度や温度管理が必要となるため、あると便利です。
- シェルター・・・・流木やコルク樹皮等の吸水性のある植物素材を選ぶと良いと思います。また、大きさも飼育個体に応じた空間が得られる大きさにする必要がありますが、特に大きすぎないことが大切です。
- 陸場(床材)・・床材は、保湿性の高い材料が良く、一般的に椰子殻を加工した製品や水苔、赤玉土、焼き赤玉土等を使用します。私は、椰子殻を加工した製品と焼き赤玉土の2種類の床材を使用し、湿度に変化を持たせています。陸場にはシェルターを設置して下さい。
- 水場(床材)・・基本的に樹上生から陸生の種ですから水場は必要ありませんが、湿度管理のために小さな水場を設けると便利です。市販されている擬岩のものやタッパー等を利用して小さな水場を作り水苔等を入れておくとよいでしょう。
- 蓋・・・・・・・・・・・・樹上生サラマンダーは、指先がミット状になっておりガラスの壁面も容易に登ってしまうため、蓋は必ず用意する必要があります。ステンレスメッシュ製や穴あきのプラスティック製等で通気性の良いものを選ぶと良いでしょう。
- 植物や流木・・・・立体的なレイアウトとするために観葉植物や流木を使用すると便利です。植物を導入する場合は、直に植え付けるのではなく鉢植えのものをセットすると管理が楽になります。
- その他・・・・・・・・給水用具(ポリエチレン製の洗浄ビン)、ピンセット(給餌用として長手のもの)、掃除道具等を必要に応じて用意して下さい。
飼育管理について
- 温度管理
- 樹上生サラマンダー(ミットサラマンダー)の仲間は、中南米の熱帯から亜熱帯域に生息している生物なので、飼育温度は23〜27゜C程度を目安にしてください。ただし、ゲージ内の温度は一定にするのではなく、ある程度の幅を持たせ、飼育個体自らが快適温度を選べるように工夫して下さい。
- 湿度管理
- 樹上生サラマンダーの仲間は、林床の落葉や倒木下、または着生植物の根本のフレークが溜まった所に生息していますので、基本的に床材が何時も湿っている状態に保ちますが、飼育温度と同様にゲージ内の湿度は一定にするのではなく、ある程度の幅を持たせ、飼育個体自らが快適湿度を選べるように工夫して下さい。
熱帯域の気象条件を考えると空中湿度は、夜間は霧吹き等で加湿し、昼間は無加湿とするのがよいと思います。蒸れと直射日光は厳禁です。
- 衛生管理
- 床材や水は汚れたら取り替えます。焼き赤玉土等の加工品を使用している場合は、洗浄・消毒を行って再利用できます。
オオミットサラマンダー等の大型種は、比較的大きな糞をします。放置しておくとカビが生えたり、悪臭を放ちますので、給餌の時に取り除きましょう。
もし、病気が発生したら床材や水を全て取り替えて、飼育ゲージやシェルター等も全て消毒します。
- 給餌
- 給餌は、一週間に1回〜1.5回の割合で与えます。多く与えすぎると消化不良を起こして死亡する場合があります。
ピンセットから餌を取るように餌付けすると、健康状態がチェックできて便利です。餌には栄養添加剤を振り掛けて与えます。また、基本的に夜行性ですから、給餌は活動が活発になる夜間にしてください。
飼育個体の購入時や掃除等のためレイアウトを変えたときは、1週間ぐらい安静にして飼育個体が住処を定め、状態が安定してから給餌を初めて下さい。
- 主な餌の種類(餌のページを参照)
- ・コオロギ
- ・ブドウムシ、ヤナギムシ、ミールワーム等の昆虫類の幼虫
- ・ワラジムシ
- ・ミミズ
- ・クモ等
- その他の留意事項
- サラマンダーやイモリは皮膚の弱い生物なので、生体に直接さわるのはなるべく避けて下さい。また、強く触ると尾を自切して生体は確実に衰弱し、多くの場合は死亡します。
掃除等のために生体を触った場合は必ず手を洗って下さい。
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