東京都の休耕田で見つけた個体
普通の個体体側に赤いスポットが出ている個体

腹部のバリエーション
普通のタイプオレンジが強いタイプ黒が多く出たモザイクタイプ

ラインが出た珍しい亜成体その腹部ラインの残った成体(撮影:佐久間 聡)

色素変異個体腹面から見たところ
撮影協力:長友 照幸

和名:アカハライモリ(ニホンイモリ)


英名:Japanese Fire-bellied Newt
学名:Cynops pyrrhogaster

分布
本州、四国、九州、佐渡島、隠岐、壱岐、大隅諸島、中之島など
生態
平地から山地にかけて分布し、水のきれいな池、水田、緩い流れに住んでいます。繁殖期は、4月〜7月頃ですが、もともと南方系の種ですので秋にも求愛行動が見られます。しかし、寒い冬に阻まれるため産卵はしません。
全長
オス:80-100mm
メス:100-130mm

解説
 アカハライモリは、日本固有の種でありCynops属の中では、最も北に分布しています。また、北限は、下北半島でありアジアにおけるイモリ科の北限にもなっています。
 繁殖期には、オスの体が鮮やかな紫色の婚姻色に変わります。産卵行動は、メスの鼻先で盛んに尾を振ります。このときオスの総排出口が大きく開き、メスを刺激する物質を分泌します。オスの求愛を受け入れたメスは、鼻先でオスの尾を軽くつつき、オスは尾を曲げたまま高く持ち上げて歩きます。メスはその後ろを付いて歩き、オスの尾をつつきます。するとオスは、精子の入った精包を水底に落とし、歩き続けます。そして、メスがその上を通過するときに、総排出腔でそれを拾い、精子の受け渡しが成功します。

 アカハライモリは、地域によって遺伝的にも形態的にも違いが見られます。これは、種分化の途上にあると考えられています。遺伝的地域効果による種分化(1993)を大きく分けると、東北集団・関東集団・西日本集団・南九州集団の4グループに分けられ、中部・近畿を含む本州中央部には、東北・関東・西日本の中間的特徴を持つものや各集団の特徴をモザイク型に持つものがいます。これを中間型と呼びます。また、各集団にも地域的なサブグループがあります。また、形態に基づく分類(1963)では種族という考え方もあり、東北、関東、篠山、渥美、広島の5地方種族と中間種族に区分されています。しかし、遺伝的種分化とは必ずしも一致せず現在主流であるとはいえません。また、形態的に最も特徴的とされている篠山種族は、独立亜種としてC.p.sasayamaeを与えられましたが、生化学的には亜種として認められません。従って、現在の日本ではアカハライモリに亜種は存在しないという考えが一般的です。海外ではC.p.sasayamaeが未だに認知されているので混乱します。アカハライモリの中で最も特徴的な集団は、南九州集団です。これは、形態に基づく分類では広島集団なのですが、生化学的には極めて特徴的なため他集団から区別されます。

 大部分のイモリに言えることですが、このイモリにも皮膚に、フグ毒と同じテトロドトキシンがあります。だからといって触ると危険という事もありません。 
コメント
 良くペットショップで売られているのを見かけます。飼育も簡単で、糸ミミズ(乾燥糸ミミズでも可)や、アカムシ、オタマジャクシなど口に入る動物質のものならなんでも食べます。また、雌雄の区別が簡単に出来るので、ペアで揃えて繁殖も容易です。水棲のイモリですが、結構陸地にもあがりますので、陸場を作ってあげましょう。また、脱走の名人ですので、蓋(通気のある物)は忘れずに!
 写真のような色素変異個体は非常に珍しい物です。私もはじめて見ました。
 このページに資料を提供していただいた長友照幸さんと佐久間さんに感謝をいたします。また、長友照幸さんにメールを送りたい人は、星野さんihoshi@mb.infoweb.ne.jpに、佐久間さんにメールを送りたい人は、delias@ss.iij4u.or.jpにお願いします。

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